平成28年4月の熊本地震では連続的に大地震が発生し、現在も避難生活を余儀なくされている被災者も少なくありません。
この緊急事態を受けて、金融庁では被災者に対して貸金業者法上の借入れ要件を一部緩和する措置を打ち出しています。
本来、貸金業法に基づく規制は多重債務者の防止など借入者の保護を図ること等を目的としています。今回の地震の被災者が、貸金業者から返済能力を超えない借入れを行おうとする場合に、例えば特定の書面を用意できないなど、法令に定める手続き等が問題となって、本来なら借りることができる資金を借りられないという不都合が生じないように 貸金業法施行規則の一部を改正しています。
①「社会通念上緊急に必要と認められる費用」の借入手続等の弾力化
総量規制に抵触する顧客が、「社会通念上緊急に必要と認められる費用」のために例外借入れを行う場合 について、被災者には以下の特例を設けました。
・貸金業者に対する領収書等の提出が必要とされているが当面の生活費等の様々な支出に充てる場合に配慮しこれを不要とする。
・返済期間が「三月を超えないこと」が要件とされているが、被災者の置 かれた状況に配慮し「六月を超えないこと」とする。
②総量規制の例外とされている個人事業主の借入手続の弾力化
個人事業主による借入れは 総量規制の例外ですが、個人事業主が借入れを行う場合について、被災者について特例を設けました。
・百万円を超える貸付けであれば、個人事業主の「事業計画、収支計画及び資金計画」に照らし、顧客の返済能力を判断しなければなりませんが、「計画」の策定・提示が困難な被災者に配慮し、より簡素な情報(現状等)に照らし判断すれば足りることとしました。
③極度額方式によるキャッシング(総量規制の枠内貸付け)の借入手続の弾力化
極度額方式による借入れを、一定額以上利用した顧客は源泉徴収票等の年収を証明する書面を貸金業者に提出しなければならないがこれについて被災者には特例を設けました。
・当該顧客は、源泉徴収票等を「二月以内」に提出しなければ、仮に極度 額に余裕があってもキャッシングが止められますが、その入手が困難な被災者に配慮し「六月以内」の提出としました。
④総量規制の例外とされている配偶者の年収と合算して年収を算出する場合の借入手続の弾力化
自分の収入だけでは総量規制に抵触する顧客(主婦・主夫等)が、自身の年収と配偶者の年収を合算した額を基準として借入れを行う場合、被災者に特例を設けました。
・当該顧客は、借入れを行う際に、配偶者との身分関係を証明する住民票 又は戸籍抄本を提出する必要があるが、その入手が困難な被災者に配慮 し、事後(六月以内)の提出で足りることとしました。
上記のいずれも、今回の地震の被災者を対象とした時限措置(10月31日まで)です。施行は公布の日(平成28年4月22日)からです。(ただし上記③に係る改正の適用については平成28年2月14日からです。
投稿者プロフィール
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