2014年6月29日の時事通信にて「消費者金融などの貸金業者の規制緩和に向け自民党が検討している貸金業法再改正案の概要が28日明らかになった」と報じられました。
≪貸金業法再改正案の内容≫
自民党が今回検討している制度改革のイメージは、要件を満たした貸金業者を内閣総理大臣が「認定貸金業者」として認定し一般の貸金業者の上限金利、総量規制はそのまま維持するが、認定貸金業者については、上限金利を改定前の29.2%に戻し、総量規制も適用しないようにするというものです。
自民党貸金業法改正案概要が定める要件は下記内容になります。
①貸金業取扱主任者が営業所・事務所ごとに一定割合以上いる
②研修体制の整備
③過去3年間に業務停止命令を受けていない
④過去5年間に認可を取り消されていない
⑤純資産が一定以上
⑥返済能力調査やカウンセリングなどの体制整備
認可は2年ごとの更新制で、29.2%を超えた金利で契約した業者には刑事罰が科されます。
また日本貸金業協会が認定業者に関する自主規制を強化し、監督・指導することによって認定貸金業者の適正な業務運営を担保する仕組みのようです。
また、自民党はこのような貸金業法の見直しを財務金融部会の下に設けた「小口金融市場に関する小委員会」で検討し今秋の臨時国会に議員立法として同法改正案提出を目指すようです。
≪貸金業法再改正案の問題点≫
今回の自民党貸金業法改正案の問題点としては下記のような内容が考えられます。
①正規登録業者の上にさらに認定業者をつくる二重構造に意味があるのか
貸金業法に基づく登録をした正規業者が再び貸金業法に基づく認可を受けるという仕組は、いわゆる「屋上屋を架す」との批判もあります。
しかし、2010年に完全施行された改正貸金業法は多重債務問題などを背景に行われた経緯もあり、二重チェックを受けることになっても業務の健全性が損なわれない慎重な措置は必要になってくるとも思われます。
②再びグレーゾーンのような二重金制が発生することにならないか
利息制限法の改定も同時に行わないと、結局、以前のグレーゾーンのごとく二重金利制となり、認定業者にとっては将来「過払い」のリスクが発生することになりかねないのではとの不安要素もあります。
③弁護士会や司法書士会の反対は必至
前述のように2010年に完全施行された改正貸金業法による上限金利の引き下げや総量規制の導入は当時社会問題化していた多重債務の問題が背景にあります。
したがって今回の規制緩和の動きについては反対論も多く、特に弁護士会や司法書士会などが抵抗勢力となることは必至です。
また金融庁としても、4月28日の参院決算委員会で麻生金融相が「現時点で政府として直ちに改定する気はない」と述べ、改正貸金業法に関しても「多重債務者対策の上で、これは結構効果があったと思っている」と述べるなど慎重な姿勢をとっています。
≪自民党が再改正を検討する理由≫
このように自民党が貸金業法の再改正を検討する理由には、中小零細企業や個人事業主など銀行から融資を受けにくい層が、改正貸金業法施行によって消費者金融からの融資も受けにくくなっているといことがあげられます。
もっと正確に表現すれば、中小零細企業や個人事業主への融資は、以前はいわゆる「事業者金融」の範疇でしたが、消費者金融の多重債務問題と切り離さずに上限金利の引き下げを行ったことにより、現在は「事業者金融」からも借りにくくなっているということになります。
本来、融資が受けられるはずであった資金需要者に適正な与信による融資を行うためにも、条件設定などを必要以上に細かくせずに、柔軟な姿勢で臨まないと、結局、何のための法改正かわからなくなってしまうことになりかねません。
自民党には是非これらを踏まえての再改正を期待したいところです。
投稿者プロフィール
- 主にサイトの編集を担当するが、記事の執筆も行う。某銀行に勤務していたが脱サラ。金融関連の出版社との馴染みが深く、金融業界の知識も豊富。
最新の投稿
- キャッシング最新情報2017.02.11キャッシングと年齢の関係
- キャッシング最新情報2017.02.11レディースローンへの取り組みについて業界に提案
- キャッシング最新情報2017.02.11銀行カードローンによる過剰貸付け調査が開始
- キャッシング最新情報2017.02.11貸金業法成立から10年を経て