金融庁と消費者庁が共同で事務局を務める「多重債務者問題及び消費者向け金融等に関する懇談会」第4回会合が11月11日に開催されました。
しかし、同懇談会は多重債務者対策について「今後取り組むべき施策を検討する」目的で開かれるもので貸金業規制のあり方を論ずるものではないとして、貸金業規制に関する議論は一切行われてはいません。
また、貸金業法の再改正法案の提出を目指していた自民党の小委員会も小委員会としての同意は得たものの、そこからの展望はみえず、一時休止状態になっているようです。
このような状況からも早期の規制緩和は期待薄と言えます。
【多重債務者問題及び消費者向け金融等に関する懇談会について】
懇談会は2012年9月25日に、多重債務者対策本部の決定により設置されました。
その主旨は「多重債務者対策について、これまでの多重債務者対策の成果を維持しつつ、新たな課題等への対応を含めた今後取り組むべき施策等について検討するため」とあり、現行の貸金業規制を前提として、新たな課題を議論するというスタンスを取っています。
(2012年9月17日の第1回会合では、金融担当副大臣がその冒頭挨拶で「貸し手への規制のみならず、いろいろな角度から借り手への対策も総合的に講じていかなければならないと思っている」と発言しており、貸金業規制とは別の課題を検討する場との位置づけを明確にしています。)
懇談会の前段では金融庁から日本信用情報機構の登録データーに基づき統計データーが示されます。
それによると、
・無担保無保証借入の残高がある借入が5件以上ある、所謂「多重債務者」は、07年3月末の171万人から14年9月末には16万人に減少した
・国民生活センターのPIO-NETに登録された多重債務者に関する相談件数が08年の9万5162件をピークに13年度は3万2135件まで減少した
・多重債務が原因とみられる自殺者数が07年の1973人から13年には688人に減少した
とされ、改正貸金業法の効果が現われていると総括されました。
また、警察庁からは、ヤミ金融の検挙事件数、検挙人員は減少傾向にあると報告されました。
【自民党の貸金業法改正の動向】
貸金業法の再改正法案の提出を目指していた自民党の小委員会も小委員会としての同意は得たもののその先には進んでいません。その理由は秋の臨時国会では労働者派遣法改正案や地方創生基本法案などを優先することになったからと言われていますが、まだ要綱段階で法案自体が策定されていないのが現実的理由のようです。
小委員会で同意ができていても、政務調査会の承認が得られなければ法案の提出はできませんが、そのためには財務金融部会や金融調査会での議論も必要ですし、さらにはその他の部会との合同部会で議論するプロセスも必要になります。
このため、見直しを進める議員も、拙速に動いて反対意見の集中砲火を受けるより時間をかけてコンセンサスを形成する道を選んだと思われます。
また加えて9月3日に行われた内閣改造の影響を受けた側面もあります。
小委員会の委員長であった平将明議員は、第2次安倍内閣で内閣副大臣に
、
小委員の顧問で金融調査会長であった塩崎恭久議員は厚生労働大臣に、
政調会長で貸金業法の見直しにも一定の理解を示していた高市早苗議員は総務大臣に任命されました。
入閣すれば党務からは離れざるをえません。これらのキーパーソンが入閣したことで、党内で見直し議論を牽引する旗振り役がいなくなってしまったという現実も議論が停滞している貸金業法の再改正法案の提出を目指していた自民党の小委員会も小委員会としての同意は得たものの要因と思われます。
しかし安倍首相が11月21日に衆院を解散したので、選挙の結果次第では自民党の議論が再開される可能性があります。
今回の自民党での議論に貸金業界はほとんど関与しませんでした。自民党との距離を保ち静観していたとも言えますが貸金業界はあまりに受け身であったとも言えます。
このまま業界の意見が反映されないまま議論され、逆に負担が増える結果になることが懸念されます。
(月刊消費者信用2014-12月より抜粋)
投稿者プロフィール
- 主にサイトの編集を担当するが、記事の執筆も行う。某銀行に勤務していたが脱サラ。金融関連の出版社との馴染みが深く、金融業界の知識も豊富。
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